ちょっとオイ曽良君! なんですか朝から大きな声出して。ウザい。今日という今日こそは言わせてもらう。どうしても納得できないことがあるんだよ私! はあ。曽良君、結構料理上手いだろ。そりゃあなたと暮らしてるんですから、最低限出来ないと餓死します。お味噌汁とかお野菜たっぷり入ってるし、ダシもちゃんと取ってるんだよね。まあ。な、の、に、なんで自分だけ食ってるんだよ! お味噌汁に炊き立てご飯にアジの開きに漬物添えて、自分だけ日本の伝統朝ごはん堪能してて、なんで私は焦げたパン!? なんだこの落差! ありえない! 自分で焦がしたんじゃないですか。違うっ、パンが勝手に焦げたんじゃい! タイマー設定間違えたんでしょう。パンひとつまともに焼けないんですか。本当に何もできないジジイですね。え、ええー。何これ、今目の前にいるのって本当に私の息子? 嘘だと信じたい……。私が言いたいのはそういうことじゃなくてー。はい。父親の健康管理も息子の役割なんじゃないかなって思ったんだよ。はぁ? 普通逆でしょう。君、別に私に管理してもらわなくても普通に生きてけるだろう。ああ、そういう点では芭蕉さんは全然駄目ですよね。言いきったよこの息子……。しかも相変わらず私をお父さんとも呼ばない。なぜだ……。私だってこれでも頑張ってるのに。んで、何が言いたいんです。単刀直入に言う。曽良君、私のご飯作ってくれない? 嫌ですけど。チクショーまさかの即答! 予想はしてたけどこんなに早いなんて! 私最近ロクなもの食べてないんだよー! 一つ屋根の下で暮らしてて、君ばっかイキイキしてるってどういうことなんだよ! おいしいご飯食べたいー! だれが稼いでると思ってるんだよ、食べさせてくれなきゃもう働かんぞ! ボイコットだ! 誰が金の管理をしていると思ってるんですか? 誰が家事の大半を担っていると思ってるんですか? ボイコットするのは勝手なんですきにしたらいいですけど、その時は追い出しますがそれでいいってことですね? ……すみません。私が悪かったです。もう嫌だ息子が怖い……。冷たい……。私だって作れるものなら作りたいさ。でもどんなに頑張っても焦げちゃうんだもん……。せっかくデパートで買ってきたマーフィー君エプロンもあっという間にスミ色になっちゃうし、グスン。










 やれやれ仕方ないな。シクシク、グスングスン。……ほら芭蕉さん。泣いてないで顔をあげて下さい。グスングスン。下手な泣き真似はさっさとやめて早く。ギックー! な、何を言うんだよ、私は泣き真似なんてしとらんぞ、する訳ないだろバカ息子! ってえ? 早く。会社遅刻しますよ。ゆ、夢? 違うと思います。これ、私の食器だよね? 僕はそんな薄気味悪いクマの茶碗は使いません。えっと、曽良君がこれ食べてたのと、一緒? ……はい。な、何で? 急に……。父親の健康管理は息子の役割だとかほざいてたのはあなたでしょうが。そ、そうだけど、本当に食べていいの? 今のナシ! とかやんない? そうして欲しいならしますけど。せんといて! ごめん食べる! ……うわ、本気でおいしい。なんか野菜がしゃきしゃきしてる。っていうか苦くない……。苦くないご飯なんて久々だ……。泣かないで下さい。気持ち悪い。き、気持ち悪いって君……! やれやれ、このまま餓死とかされても葬式代かかって迷惑なんで、仕方ないからあなたに料理教えてあげますよ。ほ、本当に……!? うう本当に美味しい。ありがとう曽良君。ですが三つだけ条件があります。なに? ひとつは僕に逆らわないこと。……。うん……。なんかすごく嫌な予感してきたけど分かった。もうひとつ。家を燃やさないこと。うん、気をつけるよ。最後に、あなたが燃えても文句言わないこと。いいですね! それはちょっと待て!