その日はいつもより意識がはっきりしていたので、先生との会話も少し覚えていた。入るなり痩せすぎだと身体を心配された。そう言われることがいつもことなのだろうか、そうでないのかまではわからないけれど、とりあえずそんなにかなーと腕をつねってみる。張りのない肌はよく伸びた。きちんと食事をとっているかたずねられた時は、   君がいつも作ってくれている気がしていたので食べてますって言った。
 先生は腑に落ちないとでも言いたげに首をかしげている。




 会話が少し続くと必然的に私の息子の話になった。明るい時間は   君の記憶がいつも薄れていたので、先生から聞く彼の話は初めて聞くもののように新鮮味がある。先生が   君を褒めている。   君は、とてもしっかりとしていて、おとうさんを守っているいい息子さんですね。(先生は彼の名前を自然と呼ぶが私は聞いているそばからわすれつづけた。今も)私はその言葉にそうでしょうと義務のように微笑む。
 私はちゃんと、笑えているのだろうか。薬がまだ身体に残っているせいで、色んなものが麻痺しているようでわからない。笑えていればいい。笑っていなければいけない。誰にも何も気付かせないことが、今の私の役目のようなものだから。











 でも、こうしていると言ってしまいたくなる。昼の彼にも少しずつにじみ出ていて、夜になると一気にあふれだす、異様なほど恐ろしいものこと。全部ぶちまけてしまえたらどれほど楽になれるだろう。私は、彼にとても怯えながら毎日を過ごしているんです。先生、上手く言えないんですが、彼は化け物です。それがどうしてなのか今の私には説明できないんですけど、彼は本当は、恐ろしい化け物なんです。私は彼が怖いんです。逃げだしたいほどに。私はそう口にしようとするたび、脳裏に私の前を歩くあの後ろ姿がちらついて、言ってはいけないと、思いとどまって、喉で止まった言葉を笑ってごまかしながら飲み下すのだった。







 (だって)


 先生、



     君は私の