「あの頃が今はとても昔に感じるよ。この村は平和すぎるんだ。この村は幸せすぎる。分かるかいペチュニア。君は何も知らないんだ。毎日人が誰かが大人が子供が敵が友達が死んで死んで死んで死んで死んでいく、あの場所を。仕方ないね、こんな村で君は生まれ育ったんだから。君はとても幸せなんだ。おれには分かるんだよ。……分かるんだ。この村に来ておれも幸せだった。今は分からないけれど。幸せだった」







 おれは彼女と二人でいたのに部屋は静かだった。おかしいな。さっきまでおれはペチュニアの家で二人で楽しくおしゃべりをしていて、彼女はおれにチョコチップクッキーを焼いてくれていた筈なのに。それにしては部屋がとても、静か過ぎだった。それから景色がまるっきり変わっていた。紅茶を入れるためにお湯を沸かしていたやかんは床に転がって水をぶちまけてしまっている。触ってみたらもうつめたかった。大分時間が経っているのだ。彼女は水溜りの傍に寝そべっていた。青い(そして、きれいな)髪が水を吸っている。よく見たら右目周辺がただれて水脹れになっている。(可哀相だ。女の子だと言うのに。後で薬を塗ってあげよう)彼女は瞳を閉じたまま寝息を立てない。おれは彼女に触れた。

「ペチュニア、眠っているのかい。それとも死んでいるのかい?」

 眼を開けないペチュニアが亡骸に見えたのは、その身体が冷たかったからだ。昔、敵をちゃんと殺せたか調べたときにふれた死体の感触と似ている。だがおれはあえてペチュニアが眠っていることにした。あからさまな出血などは見られないし、顔がただれていることを除けば彼女の顔はとても安らかだし。何せ死体は、まずい。とてもまずい。おれには死体と言う存在は有毒すぎる。


「お休みペチュニア」
 “眠る”ペチュニアを抱きかかえてベッドへ寝かせたあと布団をかけてあげた。柔らかで清潔感のあるにおいが漂って、シーツもまめに洗濯しているんだなと、彼女らしさを感じて笑みがこぼれた。お休みペチュニア。よい夢を。おれは小さな声でそう言うと、彼女の眠りを邪魔しないように部屋を出た。ゆっくりと、扉を閉める。









祈るような眠り。







 さいきんすごくすきなんですフリペチュ……。Flippin' Burgersのやりとり(殺りとり)がすきでした。ペチュの悲鳴がかわいい……!! 軍人もかわいい……!!! 実はこの前のやり取りも書いていたのですがお蔵入りとなりましたとさ。ギャフン。



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