自分は、ひとをころします。それが自分のやくめだからです。やられるまえにやるという、理性たるものがけつらくした考えは、この戦地ではあたりまえのことなのです。だからおれはやられるまえに、やりました。ようしゃは……ええと、あまりあまえてないんですけど、多分しませんでした。したいのじょうたいから自分がようしゃしたとはおもえなかったからです。(いいたかないんですが、ぐっちゃぐちゃでしたから)とにかく敵はしにました。“敵”、は、死にました。敵のはずです。だけど少し、おかしいんです。母国語だったんですよ……。しんだ“敵”がさいごにはなしたことばが、おれの、母国の、ことばだったんですよ。えーと。……えーと。えーとあれ? あの、ほんとうに、

 ほんとうに、敵だったんですよね?


(たのむから最期の瞬間に、愛しいひとの写真へ向かって愛を囁くのだけはやめてくれ)
(これ以上おれを追い詰めないでくれ)







おなじ、ことばを、はなす。






 間違って味方を殺っちゃったやんちゃな軍人熊さん。





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