※グロ注意。



 それはまだ、彼が戦場にいた時の話。“敵”と言う人間がころし放題の場所にフリッピーと言う男がいた。フリッピーはとても心のやさしい、穏やかな男だったが人をころすのがとても上手かった。返り血にまみれたそのままの姿で負傷した仲間を気遣うような、そんな男だった。
 俺の事はいいから、それ拭いてこい。負傷した男は彼に付着した返り血をさして、心配させないためか笑いながら言った。フリッピーはそこで初めて自分の服の血に気付いたように小さな声で、あ、とそれだけ漏らすとなにを思ったのか負傷した男の傷にナイフを滑り込ませた。周りの仲間たちはあまりにも唐突な彼の行動に情けないことだが暫し固まった。
 フリッピーはそのままナイフをひねり男の腹にかろうじて納まっていたものを引きずり出した。刺された男は目を開けて死んだ。新鮮な血に染められたフリッピーは口の端を歪ませたまま(それが笑顔だなんて誰も気付かない)棒立ちになったままの仲間たちに向き直った。


 それから間もなく、彼は軍を退役する。
 彼は大きな怪我はしていない。身体の病も患ってはいない。ただ、少しばかり頭がぶっ壊れてしまっただけだ。








そして彼は戦地から生還する。







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